手紙 (文春文庫)
東野 圭吾
苦渋…
「あまり、こんな風になってほしくないな」 「いや、きっとこう(いい方向に)なるだろう」 そんな想像を、さらりと裏切るラスト。でも、それって幾度と繰り返される苦しみの中で、逃げずに生きていかなくてはいけない道。それが決して容易いものではないこと、何かを犠牲にしなくてはいけないこと…という現実を目の当たりにする。 人は必ず人によって気づかされ、人と生きていくために己を知る。己を知ることは、愛する人を守るために必要なことであり、その上容易くできることではない。 また家族というのは想像以上に見えぬ絆で結ばれているものであり、時にそれは鎖のごとく雁字搦めにして苦しめる。そして誰とつながりを築いていくことになろうとも、必ずその鎖が良くも悪くも邪魔をするのである。受け容れるのか、はたまた無理矢理でも外すのか、もしくは触れずにいるのか… あぁ、この状況になったら、こういった結末も仕方がないのかな。それはそれで幸せな道を歩んでいくための苦渋の決断であるのだから。正しい答えなど誰にも分からないけれど、きっとこうするしかないのかもしれない。けど、もし自分が同じ立場ならそれができるかというと微妙なところ… いずれにせよ、兄にしろ弟にしろ、どれほど胸を痛めたのだろう…ラストのシーンにおいては家族の見えぬ絆がどれほど2人を強く結んでいたのだろう…と思うともう涙、涙。。。 しかし意外なほど、読後はそんなに暗い気持ちにはならない。 全然関係ないけれど、兄が送ってくる手紙のはじめの頃は知識に乏しい為ひらがなが多く、「アルジャーノンに花束を」を彷彿とさせるもので、それが更に切なさを倍増させたなぁ。
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重力ピエロ (新潮文庫)
伊坂 幸太郎
重くて辛いけど、凄くあたたかい…最も好きな作品。
伊坂作品の中で最も好きな作品。・・・というか、これまで出会った作品で1番かもしれない。 何度も読んだ。初読時はとにかく後半涙が止まらなかった。こんなに繰り返し読みたいと思う本は初めてだった。 「本当に深刻なことは陽気に伝えるべきなんだよ」 この言葉は、伊坂作品を象徴しているように思える。伊坂作品は比較的重いテーマを取り上げているがそう感じさせず、でもじっくり胸に響かせる。読後感も爽やかだが、その爽やかさはまるで霧が晴れていくようなイメージ。 目を背けたくなる過去を持っているはずなのに、こんな家族でありたいと思ってしまえるほどのあたたかさ、優しさに溢れている。大好きなシーンがたくさんある。 「お前は俺に似て、嘘が下手だ」 これはもう、号泣だった。重力も、遺伝子も、何もかもを超越した言葉だと思った。 春が、すごくかっこいい。ものすごく、かっこいい。 父親が、すごく優しい。ものすごく、あたたかい。 泉水が、すごくいい意味で「兄貴」らしい。泉水がいたから、春は春らしくいれたんだ。 そんな彼らが愛している母親は、芯が強くて笑顔が似合う理想的な母親だった。 本当に、最強だ。 こんなレビューを書いている途中でも、思い出すだけで目頭が熱くなる。そんな本、そうそう出会えるものじゃない。この作品に出会えてよかった。 きっと、ずっと、何度も読み返すと思います。 その度に、私はこの家族から大切なものを学ぶんだろう。
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赤い指 (講談社文庫)
東野 圭吾
リアル。
ラスト、衝撃で、声を上げて泣きました。 そういうことだったのか、と。 登場人物に本気でイライラもしたし、殺人犯を心底気持ちが悪いとも思ったんだけれど、でもそれぐらい人物描写が優れているということなんだろう。 また、実際にそういう問題を抱えている家庭が、すぐ近くにいるのかもしれないという現実を突きつけられているような気がした。 それでも…過ちを犯しても戻る道はある、人を信じる強さとか、自分の正しい思いを貫く大切さとか、そんな希望の光を残してくれる。 親が子を思って必死に守ろうとするそのやり方も十人十色であり、自分への戒め方も然り。目には見えない、むしろ誤解を生んでしまうような言動も、必ず意味があることなのであると思い知らされた。
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