デンマークの教育に学ぶ生きていることが楽しい (子どもとともに生きる幸せ)
江口 千春
デンマークの教育と暮らしに関心のある方に
和文、英文、そして写真で構成されているのが特徴。 どうしてもテキストで紹介されていることが多いので、写真がありがたかった。 全体としてページ数も少なく、テキスト量も控えめ。 制度や歴史を踏まえた記述になっていないのが不満だが、デンマークに明るくない身としてはその方が読みやすかったのかもしれない。 本書を通じて浮かび上がるキーワードは「平等」である。 デンマークの人たちが「平等」をどう考えているのか。 偉い人でもなく、日本人の著者でもなく、国民がどう考えているかに触れることができたのが新鮮。 著者のデンマークに対するポジティブなバイアスが多少気に障るが、デンマーク国民の批判的な意見なんかも紹介されていて、なかなか面白かった。
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人を助けるすんごい仕組み――ボランティア経験のない僕が、日本最大級の支援組織をどうつくったのか
西條 剛央
「善意」を「実行」に集約する方法を知りたい方に
東日本大震災後、Twitterで瞬く間に広がり、大規模でかつ大規模な被災地支援を行った「ふんばろう東日本プロジェクト」を主催する著者。 本書では、早大のMBAで教鞭を執る著者のバックグラウンドが存分に生かされたこのプロジェクトのこれまでを知ることができる。 ボランティアやNPO運営のみならず、ビジネスにも応用できるようなエッセンスが凝縮されている。 根本にあるのは、「人」というものへの理解がある。そう感じる。 どんなすばらしい企画があり、類を見ないプロダクトがあり、潤沢な資金があったとしても、要となるのは「人」である。 本書を通じて、改めて「人」の重要性を認識させられた気がする。
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オッリペッカ・ヘイノネン―「学力世界一」がもたらすもの (NHK未来への提言)
オッリペッカ ヘイノネン/佐藤 学
フィンランドの教育改革を支える価値観に触れたい方に
オッリペッカ・ヘイノネン氏は若干29歳でフィンランドの教育大臣に任命された人物である。 彼は失業率20%超に及ぶ大不況の時代に、学校教育を中心とした教育制度の改革を図り、フィンランドはノキアに代表される知識産業で経済を立て直した。 本書はボリュームもそれほどでもなく、専門用語も少ないため、非常に読みやすい。 改革を牽引した当事者の言葉に触れることができるため、それなりに満足感は得られるかもしれない。 「学力世界一」にフォーカスされているため、フィンランドの特徴である「成人教育 Adult education」についてはほとんど紹介されていない。 学校教育の力のみで経済復興を果たしたわけではないと思うが、それを読み取ることは本書では難しい。 フィンランドという国を良く知るための入り口としては優れているかもしれないが、とはいえ入り口以上のものではない。
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勤めないという生き方
森 健
「働く」の意味を自分なりに考えている方に
フリーランスや起業という働き方が注目される時代である。 「ノマド」という言葉も一部でもてはやされるようになり、個人を束縛するものを少しでも減らし、自分らしく「働く」という風潮がじわじわと勢力を拡大している。 そんな盛り上がりがまだ初期微動であった頃から、自らの志と生き方・働き方をできるかぎり近づけようと試み、結果的に独立して「勤めないという生き方」を実践する人たちの言葉が、本書の中に収められている。 このような類の本は幾つもある中で、本書においてはインタビュアーである著者の多大なる"配慮"が印象的である。 最後に記された「まとめに代えて」に、その"配慮"が最も如実に表現されている。 世の中の風潮を敏感に察知しながらも、それに迎合することなく、また世の中が期待する"文脈"にべったりと従うでもない。 「勤めないという生き方」の実践者たちのリアルを忠実に再現しようという意図と同時に、その共通点を丁寧に抽出し、読者、あるいは社会に対してメッセージを発信しようという著者の意気込みを感じる。 本書は、だからこそ、自然体のままに読者に届けられているように思う。
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ヤノマミ
国分 拓
アマゾンの奥地のリアルに触れてみたい方に
「ヤノマミ」と呼ばれるアマゾンの奥地の原住民たちの暮らしを撮影するべく、彼らと生活を共にしたNHKのディレクターによる一冊。 文明との接点も多少はあるものの、多くの男性は全裸に近い格好で、女性は赤い腰巻を巻くのみ。 ほとんどそのままの暮らしを営み続けている「ヤノマミ」。 彼らの日常はどれも文明とはかけ離れていて、しかしどこまでも人間くさい。 文化、精霊との関係、生と死、食、性、文明の影響。 どの面を見ても、文明の側から見れば理不尽で、時に暴力的な要素を含んでいる。 彼らを深く知ろうとすればするほど、僕らは容赦なく自分たちの常識を取り除くことを要求される。 それこそがこの本の魅力ではないだろうか。 「ヤノマミ」たちの文化と自分たちの常識が混ざり合って境界がなくなるとき、自分たちの手元に残るものは果たしてなんなのだろうか。 魅力的な文章で引き込みながら、そんな大きな問いを立ててくる、優れたノンフィクションである。
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小さなチーム、大きな仕事〔完全版〕: 37シグナルズ成功の法則
ジェイソン・フリード/デイヴィッド・ハイネマイヤー・ハンソン
ビジネスの新しい常識に触れたい方に
以前ハヤカワ新書から出版されたものの完全版として再出版されたもの。 「完全版」と銘打っているが、内容としてはほとんど変わっていないようで、ハードカバーになったことと随所にイラストが追加されたことが主な変更点か。 しかし本書の内容自体はすばらしく、シンプルで明快で思わず納得する類のメッセージがこれでもかとちりばめられている。 これまでの常識を覆した新しいビジネス哲学と言えるだろう。 これは自己啓発の類ではない。 本当にきちんとビジネスをしたいと考えている人が読むべき本である。
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理想の旅行業 クラブツーリズムの秘密
高橋 秀夫
21世紀のあるべき旅行観に触れたい方に
近畿日本ツーリストに入社後、代表取締役社長まで上り詰め、「クラブツーリズム」を提唱した著者による一冊。 旅行業のあるべき姿やこれからのマーケットのとらえ方を考える上でも参考になる面が多く、ビジネス書としても説得力のある著作となっている。 日本は「高齢化社会」を迎える一方で、「血縁」、「地縁」、「職縁(職場での関係性)」いずれもが失われつつある。 失われてはじめてその重要性に気づき、回帰的なムーブメントに移行するのが人間の常であるが、著者はそこで「仲間縁」に着目した。 つまり、旅行を通じて同じ趣味や関心を持ち、旅先での感動や興奮を共感できる仲間づくりが、現代社会で失われつつある「縁」を取り戻すことにつながるということである。 その理念を実現させるべく提唱したのが「クラブツーリズム」である。 ターゲットは主に高齢者である。高齢者は退職と同時に目的意識や「職縁」を失ってしまう人が多い。 そこに着眼した著者は、高齢者同士が旅を通じて交流し、「仲間縁」を拡げていく新しい旅行観を持ち込んだ。 「登山」や「温泉」をテーマにした「クラブ」に参加し、会員同士で交流を行い、自主的にクラブを運営していく。 夢物語のようだが、本書で紹介されている事例に触れるたびに、「クラブツーリズム」という理念に感銘を覚えてしまう。 また、著者のリーダーシップとビジョンにも学ぶ点が多い。 大企業の中にありながら常に時代の変化を敏感に捉え、顧客に寄り添い、新しい市場を掘り起こす。 ビジネスマンとしての模範的な存在と言えるだろう。
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風の旅行社物語─旅行会社のつくりかた
原 優二
旅行業のトレンドの推移を追いたい方に
最近旅行業に関心を持ち始めたので。 ネパールやモンゴルなどへのパッケージツアーを提供している旅行業者を営む著者による一冊。 自社の歩みを軸としつつ、時代と共に旅行代理店というもの自体がどのように変遷していったかも語られている。 面白いのは、事業に関わる数々の決断の場面でビジネスの視点がきちんと入っていること。 こういう経営者の自伝本では「思い」ばかりが前面化する嫌いがあるが、本書はそれに加えて「将来的にどっちが儲かるか」という判断を示してくれている。 ビジネス書として読んでも面白いだろう。 後半の構成が少し気になった。 商品についての説明もそこまで深くなく、都度その商品ができた経緯や組織運営の話に飛び、まとまりがなく感じた。 唐突に自社ツアーにおけるディスティネーションの写真が掲載されているが、本文と関係があるわけでもなく、もったいなく感じた(写真それ自体の魅力はすばらしい)。
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小さなチーム、大きな仕事―37シグナルズ成功の法則 (ハヤカワ新書juice)
ジェイソン フリード/デイヴィッド・ハイネマイヤー ハンソン
常識に捉われずシンプルに考えたい方に。
「Ruby on Rails」を生み出した37signalsによる著作。 率直な言葉遣いが印象的。 "ビジネス"が多くの固定的で古い常識に縛られていることを告発し、著者自身のビジネス経験に基づいて実践的に証明されたことの数々が記されている。 著者のメッセージの影響力のおかげか、読後はまじめにビジネスに取り掛かりたくなる。 それくらいビジネスがまともで、身近で、楽しく、やりがいのあるものであるように思えてくる。 おそらく、著者自身がビジネスを最高に楽しんでいるからであろう。 読者はそれをテキストの端々から読み取ることができると思う。 2012年1月には完全板が出版されている。 これから読まれる方はぜひそちらをお勧めしたい。 http://www.amazon.co.jp/gp/product/415209267X/ref=as_li_ss_tl?ie=UTF8&tag=meganegao-22&linkCode=as2&camp=247&creative=7399&creativeASIN=415209267X
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個人と国家―今なぜ立憲主義か (集英社新書)
樋口 陽一
憲法にまつわるいろいろな議論を知りたい方に
「立憲主義」がキーワードとなっている本書。 著者は、なぜ民主主義ではなく「立憲主義」なのかを説明しつつ、各国の憲法やその扱いとも比較しながら、これからのあるべき憲法の姿についてヒントをちりばめていく。 その"ヒント"は憲法にまつわる各種の議論と結びつく形で垣間見ることができる。 多文化主義に関する記述もあったりする。 そこに結論は書いておらず、時折はぐらかされたような印象も受けるが、読者が憲法を考えるための材料は十分にあるのではないか。 「個人」と「国家」はそもそも人工物である、という話も面白い。 日本と欧米を比較したくなったときも、落ち着いて本書を見返すことから始めると良さそうな感じがする。
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