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この本の感想・レビュー(2件)
時間をかけてゆっくり読み楽しめる小説です。
櫻田哲生という男性の人生の、ある一瞬を、ある一コマを切り取 ってつなげたような小説です。この櫻田という男、とらえどころが 無くて不思議な人。信念がないから読んでいても特に腹の立たない 稀有な人。あまりにも飄々と生きているので、それに振り回される 女性の方が、キィキィしすぎじゃないかと思わせてしまう男性。 とにかく切り口に不安定な魅力を持っていて、一篇を読み終わる ごとに「……?」と首をかしげて、次の一篇を読み始めるのくり返 し。どの篇もはじめのうちは彼の何歳の出来事なのかがわからなく て、深くさぐるように読んでしまう。そのつかみどころのない、わ からなさがこの小説の一番の魅力です。 井上荒野の小説に出てくる人物は、そりゃ登場人物にするだけあ って変わった人ではあるけれど、突飛な人ではなくどこにでもいる だろうなぁレベルの変わった人なのに、顔が想像できない事が多い これも彼女の小説を読む楽しみの一つです。
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