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火怨〈上〉―北の燿星アテルイ (講談社文庫)

高橋 克彦

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この本の感想・レビュー(1件)

候之_2339
読んだ日: 2010/09/05
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俺は蝦夷の心こそ守りたい
 集中的に読んでいた五木寛之さんの本の一つに、この本が紹介されてあったことから手にした本。
 話は長らく朝廷軍に仕えていた鮮麻呂の蝦夷への復帰から始まる。といっても鮮麻呂は、完全に中央に組み込まれていたわけではない。表面上、そのような体裁は取っていたものの、心根は蝦夷楽土の建設にあった。鮮麻呂が阿弓流為(アテルイ)やその父阿久斗(アクト)と結託して、朝廷軍のいる伊冶城を襲ったことから以後二十年余りの戦乱が幕を開けることとなる。
 蝦夷に不運だったのが、蝦夷の地で金塊が見つかったことだ。金など蝦夷にとってはさほど重要ではない。しかし、朝廷にいる貴族や役人にとっては喉から手が出るほど欲しいものだ。これを機に、露骨な蝦夷狩りが始まる。蝦夷など人間ではない、と。
 こういったことを背景にいくつかの大きな戦さが繰り広げられるのだが、所々で蝦夷と朝廷軍の視点が相交じり、まるで折り紙のように物語が織られていくのが面白かった。やや朝廷軍の方がルーピーに描かれるのだが、それは作家の愛嬌と言っていいだろう。また、文献や資料の少ない中で、蝦夷の戦いをこうも壮大に描いてしまう作家の想像力に驚嘆してしまう。さすが、吉川英治文学賞を取っただけある。
 話は、五万の朝廷軍を打ち破った後、阿弓流為や母礼等が京に向かうところで終わる。何か波乱が起こりそうな終わり方だ。また、まだ征夷大将軍となっていない坂上田村麻呂が下巻では出てくるだろう。阿弓流為等は田村麻呂に対して、ある種の親近感とある種の畏怖感を持っていたことが上巻で明らかにされた。一体、下巻ではどのように話が展開するか、今から楽しみだ。
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