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不純の理由
君を産んでから忘れられない数字が増えた。 例えば 3,214g。 これは君が生まれてきた時の重み。 そして今年。 幅3.5㎝ 長さ7㎝ 君が生まれて16年目の夏。 これは忘れられない数字となった。 『切らなくちゃ判りません』 お医者は率直な人だった。 高校一年のレントゲン。 全員が行う検査に一人君は引っかかり それでも大したことないだろうと 家族で呑気に構えていたら『大学病院へ精密検査を』ときた。 紹介状などというものを初めてもらい 言われるがまま精密検査を受けたら 決まり事のように入院と言われ、漸く頭が回らなかった。 腫瘍は大きいので切らなくては取れないでしょう。 全身麻酔になります。 脊椎からもカテーテルをいれます‥ 突然。のくせに当然のように 毎日毎日行われる採血、レントゲン。 慣れたら寝れるよと言われたMRI、 CTスキャン‥。 夏の計画は予期しないことばかりだった。 他のご家族の方は? お父さんは? と聞かれた言葉は他意はなく、 ありのままの疑問で 失礼な言葉とも思えなかった。 母子家庭ですのでと答えた時も あたりまえの答えで わびしくなる理由などなかった。 そのくせ何故か 『聞かれた言葉』を いつまでも引きずっていたのは 本当にこの子がいなくなったら 母だけになると思わされたからだろう。 輸血について 麻酔について 手術について 各担当医から説明を受け、 質問をし、 同意書の本人欄に 記入する君は我が子ながら偉かったと思う。 その間、母は 祈り求め、 十分な説明を受け、 大丈夫だよ、大丈夫と自分を励まし、君を励ました。 そして文字通り、君は大丈夫の体に戻った。 君にとって 大丈夫の言葉は有りがたいことに嘘にはならなかった。 本当にありがたい。 ありがたい。 が、やはり母の疲れには敵わなかった。 炎天下と毎日の病院通いと会社勤務は 母の大丈夫にヒビをいれかけた。 眠れなくなる。食べれなくなる。 マズイと考えたのは定かではなく 無意識のうちに本に逃げ込もうとしたのだろう。 しばらく行けなかった本屋に行った。 何か夢中になる本と探したつもりはない。 現実逃避を狙ったつもりもない。 夢中で読み、事実元気になった。 が、 純粋に楽しめて読んでいるのは、退院後の今の方だ。 やはり逃げていたと、 不純だったなと思う。 ただし、 面白くなければ続きを買うことは無かった。 繰り返し読み返すことも無かった。 それは間違いなかった。
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